ベリーと栄養摂取

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フィンランドの森には栄養学の観点から見て栄養価が高く、味の良い、天然のベリーが沢山実っています。フィンランド人にとって天然果実は毎日の食生活の重要な役割を持っています。天然ベリーには様々なミネラルやビタミン、多くの果物に比べて体に良いポリフェノールがより多く含まれているためベリーの消費をより増やして行く事は大切なのです。

毎年収穫時期には、新鮮な天然ベリーを心置きなく味合う事が出来ます。また一年中ベリーを楽しむ為に、冷凍保存したりジャムやジュースにして保存をしておきます。果実に含まれる栄養素を壊す事無く摂取するためには、なるべく手を加えずにそのままで食する事をお勧めします。果実の皮の部分には体に良いポリフェノール群が最も多く含まれているので、ジュース作りのために果汁を搾った後に残った皮はすぐに捨てずに、調理に役立てると良いのです。

様々な天然ベリーを毎日の食事に取り入れてみませんか。そのままでも、乾燥させたものでも、ソース、ジャム、パウダー、果汁100%ジュース、様々な形で摂取することが出来るのですから。色々な食事に変化をつけながら取り入れてみるのも楽しいですよ。


毎日 100gのベリーを食べましょう!


栄養素

ベリーは多くの栄養素を含む食材に属します。100g当たり35-80kcalととても低カロリーです。果実の80-90%の成分は水分です。果実に含まれる炭水化物はグルコース、フルクトース、サッカリンといった果糖です。また少量のソルビトールといった糖アルコールが含まれています。

天然ベリーのプロテインや油脂の含有量は少量です。例外としてシーバックソーンには天然ベリーの中では一番多く油脂が含まれており、100g中5gもあります。種子や果肉には体に良い良質な油脂が含まれています。果実の種子が小さければ小さい程油脂の量は多くなります。種油には主に多価不飽和脂肪酸があり、天然食材でしか摂取出来ない内臓に不可欠な、とても良い脂肪酸が含まれているのです。リノール酸(ω-6脂肪酸)とα-リノレン酸(ω3-脂肪酸)は1:1で含まれています。シーバックソーンにはこれらの必須脂肪酸に加えてω-9脂肪酸やω-7脂肪酸のパルミトレイン酸が含まれています。果実にはコレステロールは含まれていません。

 

食物繊維

多くの天然ベリーには果物に比べてより多くの食物繊維が含まれていて、不溶性と水溶性の両方があります。水溶性食物繊維には植物の細胞壁の構造に必要なペクチンがあります。少々未完熟な果実にはペクチンがより多く含まれているため、ジャムやゼリーなどに利用されます。皮の厚いベリーには天然のペクチンが多く含まれているため、ゼリー状に固めるためにそれ以上添加物を加える必要はありません。食物繊維が豊富に含まれている食材には少なくとも100g中6gは食物繊維があります。つまり天然のクラウドベリーやシーバックソーンは食物繊維を摂取するのに最適なベリーなのです。


ビタミンとミネラル

フィンランド人の日常において、ベリーはビタミンCを摂取できる重要な食材の一つです。天然ベリーの中でもシーバックソーンやクラウドベリーのビタミンC含有量は優れています。クラウドベリー75gまたは50g弱のシーバックソーンは一日に必要なビタミンC75mgを有に満たします。ブルーベリーやリンゴンベリーのビタミンC含有量はそれほどでもありませんが、ポリフェノール群の含有量は優れています。ビタミンCは水溶性なので、酸化したり光や熱によって壊れやすい性質があります。そのため、より多くのビタミンCを摂取したいのであれば、新鮮なままか熱を加えないで摂取するのが最適です。

天然ベリーからはビタミンEも摂取可能です。クラウドベリーやシーバックソーンには豊富な油脂が含まれているため、天然ベリーの中でも脂溶性ビタミンのビタミンE含有量に優れています。(約3mg/100g)シーバックソーンの種子油にはトコフェロールやトコトリエノールといったビタミンE群があり、250mg/100gもの量が含まれています。ベリーには吸収されるとビタミンAに変わるカロテノイドも含まれています。

ベリーはビタミンの他にもミネラルを含んでおり、その量は果実や野菜に匹敵します。ミネラルにはカリウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、セレンやマンガンなどがあります。しかしベリーに含まれるミネラルの量はそれほど多くはないため、ベリーだけで一日に必要な摂取量を満たすことは出来ないのです。ベリーにはナトリウムに比べてカリウムが豊富に含まれているため、高血圧患者に適しています。


ポリフェノール群

ベリーはビタミンやミネラルに加えて、栄養群には属しませんがポリフェノール群も含んでいます。ポリフェノールは植物にとって重要な働きをするもので、紫外線や害虫、ウイルス、バクテリア、カビから身を守り、生長剤の役割を果たします。植物に含まれるポリフェノールの量は気温、光量、土壌に含まれる栄養や湿度などに左右されます。ポリフェノールについては様々な研究がなされており、人体の健康に影響を与えることが分かっています。つまり天然ベリーは我々がポリフェノールを摂取するのに適した食材であり、植物界の中でも一番多く含んでいるのです。全てのベリーは何らかのポリフェノールを含んでいます。

アントシアニンは赤、青、紫色をしており、植物の細胞液に含まれているフェノール群です。ベリーの色はアントシアニンの量によって異なります。

一番多くアントシアニンを含んでいるのはブルーベリー、ガンコウラン、ブラックカラント、クロマメノキなどがあります。赤い実をしたベリーにはアントシアニンの量は多く含まれていません。黄色または透明色をしたベリーにはごく微量か、全く含まれていません。栽培ブルーベリーに比べて天然ブルーベリーには4-5倍ものアントシアニンが含まれています。ベリーから抽出されたアントシアニンは食品の着色料として、人工的に合成されたものよりも注目されています。

アントシアニンとはフラボノイドの一種でアントシアニジンが糖と結びついたものを言います。(アントシアニン=アントシアニジン+糖)アントシアニジン単体では不安定ですが、糖と結合することにより安定します。そのため植物ではアントシアニジンは糖分と結合したもの、アントシアニンとして存在しているのです。

フラボノールにはクエルセチン、ミリセチン、ケンフェロール、イソラムネチン等があります。クロマメノキやシーバックソーン、クランベリーには最もフラボノールがあり、中でもクエルセチンが多いです。

スチルベンに属するレスベラトロールはブドウに多く含まれています。リンゴンベリーにはそれと同等の量のレスベラとロールがあります。

リグナンとは植物性卵胞ホルモン様物質のことで、人体に取り入れられると腸内細菌の働きによってエンテロラクトンに変化します。天然ベリーではリンゴンベリーやクランベリーに多く含まれており、その量は他のベリーに比べても半分以上もの差があります。リグナンの効果については、ホルモンによる癌の進行を妨げる効果があると予想されています。

タンニンにはエラギタンニンやプロアントシアニジンが含まれる。研究によってエラギタンニンには腸内細菌であるサルモネラ、ブドウ球菌やカンピロバクター等の悪影響を及ぼす細菌の成長を妨げる効果が分かっています。これによって悪影響のない腸内細菌の活動が妨げられることはありません。

最もエラギタンニンを含んでいるベリーはクラウドベリー、ラズベリー、チシマイチゴです。イチゴにもある程度含まれています。エラギタンニンは我々が一般的に口にする食材には殆ど含まれていないため、ベリーはエラギタンニンを摂取する格好の食材なのです。クランベリーやリンゴンベリーに含まれるプロアントシアニジンの量は目を見張るものがあります。プロアントシアニジンには尿道壁や腸内、口内などに潜む悪影響を及ぼすバクテリアの成長を妨げる働きがあります。

 

ベリーに含まれるポリフェノール群

-フラボノイド

  • フラボノール クロマメノキ、シーバックソーン、クランベリー、リンゴンベリー、ガンコウラン
  • フラバン
  • フラバノン シーバックソーン
  • カテキン リンゴンベリー、ガンコウラン、ブルーベリー
  • イソフラボノイド
  • アントシアニン ブルーベリー、ガンコウラン、クロマメノキ

 

-フェノール酸

  • ヒドロキシシナモン酸 ブルーベリー、クラウドベリー
  • ヒドロキシ安息香酸 ブルーベリー

 

-リグナン リンゴンベリー、クランベリー、ブルーベリー

 

-タンニン

  • エラギタンニン クラウドベリー、ラズベリー、チシマイチゴ
  • プロアントシアニジン クランベリー、リンゴンベリー

 

-スチルベン

  • レスベラトロール リンゴンベリー

 

ベリーの健康への影響

これまで得られた結果は、in vitro(試験管内などの人工的に条件を整えた環境)実験方法や実験動物を使った研究によるものです。これらの研究において、ベリーに含まれる様々な栄養素の持つメカニズムが解明されてきています。例えば腸内細菌、ヘリコバクター(ピロリ菌)、歯の病気を及ぼす等のバクテリアの持つ悪影響を妨げる働きや、グルコース、インシュリン、脂質代謝や炎症反応などに与える影響などがあります。フィンランドでは口の健康や伝染病、メタボリック症候群また食後の血糖値の変化に与えるベリーの影響、効果を研究しています。

人体を研究対象とした臨床実験や栄養学研究の成果はまだそれほど多くは得られていません。前向きな研究結果としては、クランベリーやリンゴンベリー濃縮果汁が尿道感染症にもたらす効能やシーバックソーンの種子油の肌や粘膜に与える効能などがあります。また毎日160gのベリーを摂取することによって血圧、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、血小板の働きにも効果を与えることが分かっています。アントシアニンが目、視力や高齢になるにつれて出てくる視力の変化に与える効果についてはまだ研究の余地があります。